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中国『技術輸出入管理条例』の改正と実務への影響

 

中国『技術輸出入管理条例』の改正と実務への影響 



2019318日、国務院は『国務院による一部の行政法規の改正に関する決定』を公布し、公布日より施行する。その決定により、『技術輸出入管理条例』の改正が行われ、「制限条項があってはならない」という規定及び改良技術成果の権利帰属等に関する規定が削除され、これにより、契約の両方にとって、技術輸入の交渉の中、意思自治の空間が増えた、ということが注目されている。本文の目的は、修正の内容、越境技術取引に生じ得る影響を解読することである。    

 

1.『技術輸出入管理条例』の改正内容

今回、国務院は第24条第(3)項、第27条、第29(「技術輸出入の調整内容」)の削除を決定した。具体的には、以下のように示す。

元第24条第(3)項  

「技術輸入契約の譲受人は契約の約束に従って譲渡人が提供した技術を使用し、他人の合法的権益を侵害する場合、譲渡人が責任を負う。」

元第27条 

「技術輸入契約の有効期間内、改良技術の成果は改良した側に帰属する。」

元第29条 

「技術輸入契約の中、以下の制限条項があってはならない。

 () 必須ではない技術、原材料、製品、設備又はサービスの購入を含む、技術輸入に必須ではない付帯条件を譲受人に求めること。

 () 特許権の有効期間が満了し、又は特許権が無効宣言された技術について、譲受人に使用料の支払い、関連義務の履行を求めること。

 (譲渡人が提供した技術に対して譲受人が行った改良、又は譲受人が改良した技術の使用を制限すること。

 (譲受人が他の供給先から譲渡人が提供した技術と類似な技術、又は競争の技術の取得を制限すること。

 (譲受人が原材料、部品、製品又は設備を購入するルートと供給先を不合理的に制限すること。

 (譲受人の製品の生産数量、種類又は販売価格を不合理的に制限すること。

 (譲受人が輸入の技術で生産した製品の輸出ルートを不合理的に制限すること。」

 

削除された以上の3つの条文はいずれも技術を国境外から国境内へ移転する技術輸入契約の強制性規定であり、国境外から国境内への特許と技術の譲渡も、国境外の主体から中国の会社への特許実施許可又は技術サービスの提供等も含まれている。これらの条文に関わる、権利侵害とならない保証義務(24条第3)、将来の知的財産権の帰属(27)及び譲渡と許可の条件制限(29)の関連規定は、いずれも越境技術取引の契約交渉中に中国と外国の両方の間に、不一致やがしばしば生じる条項である。

 

注目に値するのは、国務院の決定が公布される3日前、2019315日、全国人大では期待されてきた『外商投資法』(202011日より施行)が可決されたことである。統一の外商投資の基本法として、外商投資の中の技術と知的財産権の関連取引について、特別な条項が設定され、「自主原則とビジネス規則に基づく技術協力を励む」ことが明確され、「技術協力の条件は、投資の各当事者が公平の原則、平等にのっとり、協議で決められ、行政機関とその役人は行政手段で技術の強制譲渡をしてはいけない」ことが強調されている。その他、『外商投資法』には、行政審査と法執行の中で外資系企業が披露した営業秘密を保護すること、知的財産権許可使用料等に対しては法的且つ自由的に決済することが要求されており、いずれも中国系企業と外資系企業に対して、「同一視し、平等に取り扱う」という原則を反映している。

 

これにより、『技術輸出入管理条例』の改正であろうと、新しく公布された『外商投資法』であろうと、伝える意図は一致しており、即ち、渋外技術協力の自主と平等原則が強調され、『技術輸出入管理条例』に対する改正は『外商投資法』の原則に従い、技術と知的財産権分野での外商投資と取引を促進するための良い基盤を築く。

 

2.『技術輸出入管理条例』の改正が技術協力への潜在的影響

近年来、知的財産権で駆動された投融資取引及び技術協力類プロジェクトの「爆発的な」発展を背景に、上記改正で法律レベルで米国をはじめとする一部の外国の技術企業が中国の法律における「技術譲渡を強制する」という規定に対する心配がなくなり、特に論争になってきた元第29条第()項における、「改良技術の使用を制限してはならない」という規定、及び元第27条における、改良技術の将来の知的財産権帰属に関する強制性規定が削除されたことで、越境技術協力、特に国境外技術の導入に、大きな影響を与える。

 

今回、国務院は一部の制限条項の削除を決定したが、これはただ行政法規レベルで越境技術取引に対して行った改正だけであり、即ち、例えば、特許(出願)権譲渡、特許許可、技術譲渡、技術サービス等の方式で行われた越境技術移転、特に、貿易、投資又は技術協力の方式で技術を国境外から国境内へ移転する行為等に適用される。しかし、上記技術輸出入の調整内容について、中国現在の契約法及び独占禁止分野での立法の中、一部の類似な制限性規定がある。

契約法の面では、非越境技術取引について、中国『契約法』と『最高人民法院による技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する解釈』(「『技術契約司法解釈』」)にも類似な規定があり、しかし、わずかな区別がある。全体として、『技術輸出入管理条例』、特に技術輸出入の調整内容に比べて、『契約法』と『技術契約司法解釈』の方は契約両方の自由意志をさらに尊重する。

 

『契約法』と『技術契約司法解釈』以外、独占禁止分野の立法から見れば、現在の『独占禁止法』と国家工商行政管理総局が2015年に公布した『知的財産権の濫用で競争を排除・制限する行為を禁止する規定』においても、知的財産権を行使する中、競争行為に対する排除、制限について、関連規定がある。「市場支配力を持つ経営者は、知的財産権を行使する中、正当な理由がない場合、特定条件に合致する同時販売行為や不合理的な制限条件を付加する行為等で競争を排除、制限する目的を実現してはならない」という要求がある。これらの規定もまた技術輸出入の調整と部分的に重複しているが、適用の主体は「市場支配力を持つ経営者」に限定されている。本シリーズの前の文章において述べたように、この種類の行政性規定は技術契約分野での「独占禁止」に関わる強制性規定と認定され、直接に適用される可能性がある。しかし、実践の中で、外国の法律と国外の仲裁の適用が選択された場合、関連仲裁の裁決も上記強制性規定を適用することなく、中国で認めて執行される確率が高い。

 

3まとめ

輸出入技術の権利侵害責任、改良技術成果の帰属及び制限性の強制性規定が削除されたため、今後、輸出入契約が締結される時、これらの内容は契約当事者によって自由に約束することができる。すでに締結された技術輸出入契約に対しては、追加協議を通じて一部条項を変更することができる。

 

『技術輸出入管理条例』に対する今回の改正で、ある程度、現在の国際情勢の変化及び新たに公布された『外商投資法』の原則に従ったものであり、輸入技術の権利侵害責任の負担、改良技術的帰属、制限性規定等の強制性規定が削除され、輸入技術の技術譲渡人と譲受人の自主権が大幅に向上した。同時に、今回の改正は、外国の企業が中国企業へ技術を許可/譲渡する積極性の向上、国際貿易、特に知的財産権貿易の発展の促進に対して非常に積極的な影響を与えている。